“被爆と精神的影響”

 1986年にソビエト連邦ウクライナで起きたチェルノブイリ原子力発電所事故で、放射能汚染は広範に及び とくに影響の大きい地域(ウクライナベラルーシ、ロシア)の住民に健康障害が懸念され、1990年に当時のソ連政府から医療協力の要請により。笹川財団が原爆医療の知識と経験をもつ広島・長崎の放射線医学・医療の専門家を派遣された事業をまとめたものである。
http://www.smhf.or.jp/outline/pdf/chernobyl.pdf
この中の内容で 私が気になった箇所を二つ紹介します。
○ 座談会2 P30にある 左列 最後から4行目 
 柴田 この5年間でわかったことを整理して発表することが第一の義務だと思いましす。今のところ白血病は見つかっていませんが、我々が調べた5万〜7万の子どもたちがサンプルとして偏っていたためにみつからなかったというわけではありません。放射線被爆というとどうしても広島、長崎というストーリが念頭ににあって、まず白血病が発生して、その後甲状腺が発生すると予測されがちです。しかし、チェルノブイリは今後も起こりうる原発事故の一つの形態で、広島、長崎とは被爆の状況が全く違います。ですから、チェルノブイリの場合に順序が逆になったことは、別に不思議とは思いません。むしろ新しい知見だと思います。
 藤村 だから成人になった時に癌が多くなるかどうかということをフォローする必要があると思います。
 柴田 「低線量被爆」がいったいどんな結果を生み出すかは簡単にはわからないと思います。どれぐらいであれば人間の一生においてほぼ安全といえるるか、これまでの結果をそういう風に役立てるよう努力する必要があると思います。
 藤村 いまだかつて世界でこのような調査をした例はありません。将来的に何らかの形でこのデータを利用してもらえるようにしなければならないということが、我々の最終目標でしょうね。今回の我々の検査システムがベストかどうか反省点もあると思います。

○ 座談会1 P13にある 「超音波診断装置でのスクリーニングと精神被害」
長瀧 話題の超音波診断装置で現在の長崎のスクリーニングについてもう少し紹介します。
 チェルノブイリも含めまして超音波で発見された被爆による甲状腺の結節をすぐに手術するのか経過を見るのかは大きな問題です。結節noduleが見つかった人をどうするればいいのかということです。
 話が飛びますが、ネヴァダの原爆実験によって放射性ヨードが米国全体に広がっていることがわかりました。それを議会で取り上げて、NAS全米科学アカデミー)が隠していたとか、いろいろ経過がありまして、出版物としてすべての調査結果を発表してます。ネヴァダの原爆実験で甲状腺がんが増えているという発表はあるのですが、スクリーニングをやって見つかったときに臨床的にどうするかという結論が出ていない段階ではスクリーニングをやるべきではないと述べられています。米国的に考えると、スクリーニングでnoduleがありますというだけで何も治療ができないのでは心配が増えるだけなので、スクリーニングはやらないほうがよいというものです。
 このような被爆甲状腺でもっとも重要な問題に挑戦しまして、今、長崎では10年前に長崎でやったスクリーニングを同じ規模でやっています。そうするとnoduleのある人から がんが出る割合はコントロールに比べて20倍も多いことがわかりました。
 原爆でもチェルノブイリでも大切なことで話題になっていますのが精神的影響です。実際にチェルノブイリの発表でも精神的影響が増えています。
 先ほどお話した中国が原発をつくるときのシンポジウムでは、日本のデータがヒステリーと表現されました。精神的な問題は被害にはならなかったのです。日本でもそのとおりでしたが、阪神・淡路大震災のときから始まって、バスのハイジャックなどがあって、精神的影響という言葉が新聞にも出るようになりました。そして去年ですけれども、精神的影響が長崎の被爆者に関しては正式に被爆地域の議論の中で認められたのです。精神的な被害を国が保障するというので米国大使館の精神科の医師からいろいろ質問されました。
  
上記の箇所で 私が気になるのは 精神的影響です。
 米国的考え方はクールと言っていいのかわかりませんが クールです。
日本の国民性はここまでクールになれないでしょう。 しかし 放射性ヨードを被爆したという精神的影響で がんが出る割合がコントロールに比べて20倍も多いことがわかりましたという報告が上記の中にありますが これは また スクリーニングにて結節noduleがあると告知された 精神的影響も考えないといけないと思うのです。(コントロールの定義が定かでないので解釈が分かれると思いますが)
 被爆された方々に“病は気から”なんて なにのんきなことをいうのだと お叱りを受けるかもしれませんが “被爆甲状腺でもっとも重要な問題”なのだと 身を引き締める思いでいます。 本当にデリケートなお話なんです。